配偶者居住権とは、相続人配偶者が建物所有権を相続しなくても、終身で住み続けられる権利です。
(例)
- 被相続人X 配偶者A 子供B
建物2000万円 現金2000万円がXの遺産 - 配偶者Aと子供Bで遺産分割をした
- 建物2000万円は配偶者A 現金2000万円を子供Bが相続
- その結果、現金をもらわなかった配偶者Aは生活できなくなる
このようなことを防ぐため配偶者居住権が創設されました。
それでは上記の例と同じケースで、配偶者居住権を使った場合はどうなるか…
- 被相続人X 配偶者A 子供B
建物2000万円 現金2000万円がXの遺産 - 配偶者Aと子供Bで遺産分割をした
- 建物の居住権を配偶者A 所有権を子供Bが相続
- 建物2000万について、居住権500万 所有権1500万の評価になった※
- 現金2000万について、1500万が配偶者Aの法定相続分となる
- のこり500万が子供Bの法定相続分となる
- 配偶者Aは「居住権500万と現金1500万」を相続し、子供Bは「所有権1500万と現金500万」を相続する
配偶者Aは、いままで住んでいた建物に終身で住めて、現金1500万円を手にしたので生活できます。
これが配偶者居住権のメリットです。
※配偶者居住権の評価計算は難しいので、司法書士・税理士に任せましょう。
遺言・遺産分割・家裁の審判の3つの方法で、配偶者居住権は取得できます。
ただし建物が被相続人と第三者(配偶者除く)との共有だった場合、配偶者居住権は取得できません(民法1028条)。
3つの取得方法なかで「遺言」により配偶者居住権を得た場合で、婚姻期間20年以上であれば、配偶者は最も多くの現金を相続できます(904条4項 持戻し免除)。
配偶者居住権の対抗要件は登記です(1031条)。
建物の所有権を相続した者(子供B)は、配偶者居住権の設定登記をする義務を負います。
「建物賃借権のような占有」では、配偶者居住権の対抗要件にならないので注意です。
配偶者居住権は譲渡できません(1032条2項)。
配偶者という身分に与えられた権利なので当然ですね。
配偶者居住権・配偶者短期居住権(以下「短期居住権」という)の2種類があります。
配偶者居住権は前述までのとおりです。
短期居住権とは
①被相続人所有の建物に②被相続人が死亡する前から住んでいた、この①②を満たした配偶者ならば、一定期間無償で居住できる権利です(1037条1項)。
一定期間というのは、下記の3つのうち「何かあった時から6ケ月」までです。
- 遺産分割が確定している場合、相続開始の時から6ケ月
- 遺産分割を行った場合、建物の帰属が確定した時から6ケ月
- 遺贈があった場合、受贈者の請求をうけた時から6ケ月
配偶者居住権と短期居住権の比較をまとめました。
配偶者居住権 | 配偶者短期居住権 |
---|---|
遺言・遺産分割・家裁の審判 どれか1つを経ることによって生じる | ①被相続人所有の建物②死亡前から居住、①②を満たせば自動的に生じる |
終身のあいだ、権利が生じる | 一定期間のみ、権利が生じる |
建物に対して使用権と収益権が生じる | 建物に対して使用権のみ生じる |
登記請求権を有し、第三者対抗要件は登記 | 登記請求権は有さず、第三者対抗要件なし |
譲渡できない | 譲渡できない |